2020, Jul. 4
味噌の表面に、
カビや酵母が生える原因は?
「今年初めて挑戦した手作り味噌!
そろそろ開封してみようかな?
ぎゃ!!
なんか表面がオゾマシイ光景になってる、、、。」
せっかく味噌を手作りしたのに、表面に何か生えていては、食べる気がしなくなってしまう方もいますよね。
発酵には、菌が必要。そして、菌が生えるのは、ごく自然な事。でも、出来れば、グロテスクな光景を見ずに味噌を手作りしたい。そんな方は、ぜひ読んで下さい。
自分の味噌に何が起きたのか知りたい方は、まずこちらをオススメします。
「これってカビ?」みそに起きる変化 >>
嫌気性と好気性
まず、発酵に必要な環境についてお話しします。
発酵には、「嫌気性の発酵」と「好気性の発酵」があります。
空気に触れたくない発酵と、空気に触れたい発酵と覚えると、分かりやすいと思います。前者は、空気を好まない菌の働きで起こる発酵。後者は、空気を好む菌の働きで起こる発酵です。菌にも色々好みがあるのです。
手作りしようとしている発酵食品があれば、それはどちらの発酵なのか知る事が、美味しく作るコツでもあります。
例えば、ぬか漬け。
作った事がある場合、想像しやすいと思いますが、ぬか床は、ほぼ毎日かき混ぜるのが掟です。ぬか床は、酸素に触れて育つ発酵なのです。そして、毎日混ぜないと、ぬか床の表面が大変おぞましい光景になります。忘れっぽい私は、ぬか床の掟をすっかり忘れ、何度もダメにした経験があります。。。
さぁ、先ほどの話に戻って、ぬか漬けは
「嫌気性の発酵」でしょうか?
「好気性の発酵」でしょうか?
そう、好気性ですね。空気に触れる事で育って行きます。酸素がある事を好む乳酸菌などをフル活用して、ぬか漬けは美味しく発酵します。
では、ザワークラウト(乳酸発酵キャベツ)はどうでしょう?
仕込み方から出来るまでを、簡単に書くので、お考えください。
キャベツをザクザク切って、2%程の塩で揉みます。すると沢山の水分がキャベツから出て来ます。それを、瓶に詰めて上から押すと、キャベツが水の下に沈む程になります。キャベツが全て水の中に沈む様に重石をして、1週間ほど常温で放置します。すると、キャベツが黄色っぽく変化して、水が白濁して来ます。食べると、お酢を入れてないのに、ほのかに酸味があります。こうして、いとも簡単にザワークラウトが出来上がりました。
さあ、ザワークラウトは何発酵でしょう?
ヒントは、キャベツは水の中にあります。
正解は、嫌気性の発酵です。
ザワークラウトで発酵させているキャベツですが、空気に触れない様、塩水の中に沈めています。塩気があっても活動できる、嫌気性の乳酸菌がキャベツに働きかけて、キャベツと塩水を酸っぱくしてしまうのです。そして、キャベツは腐らない。
嫌気性の発酵、不思議だと思いませんか?
味噌は嫌気性?好気性?
さあ、本題に戻ります。
味噌はどうでしょう?
味噌蔵や、家庭によって多少違いはありますが、味噌は容器に押し入れた後で、重石を上に乗せます。重石を乗せると、味噌の表面に溜まり醤油が上がって来ます(仕込みの方法に寄りますが。)。この溜まり醤油の下でみそが発酵すると、味噌にとっては完璧な嫌気性の環境が実現します。
そう、味噌は嫌気性の発酵なのです。
ここで、頭の回転が速い方は、「空気に触れないのが良いなら、密閉しては?」と思われるかもしれません。
密閉しても出来なくはありません。
しかし、発酵の過程でガスが発生するのです。
よく、生きたキムチや味噌を買うと、空気穴みたいなバルブが付いている事ありませんか?あれは、発酵で生まれるガスを逃がす為に付いています。容器を密閉して作るならば、必ず定期的にガスを抜かないと、容器が膨らんでしまったり、味噌の場合アルコール臭が強くなる事もある様です。
先ほどのザワークラウト、こちらも微妙にガスを発生させます。海外では、蓋が特殊にな形になっている容器に、ガス逃がしの装置をつけて野菜の発酵をしてる方達もいます。
嫌気性で、空気に触れない状態を作りつつも、ガスを逃す工夫が必要なのです。この様に説明すると、ものすごく面倒に聞こえるかもしれません。でも、安心してください。先人たちが既に味噌を美味しく作る方法を示して下さっています。
味噌の為に作る、嫌気性の環境。
先ほどサラッとお伝えしましたが、味噌が美味しく発酵する環境について詳しくお伝えします。これはつまり、味噌の表面に、余計なカビや酵母を生やさず、発酵させる方法とも言えます。(個人の見解によるものなので、異論がある方もいらっしゃるかと思います。)
① 重石を味噌の表面、全体に乗せる。
私は、重石の役割はとても重要だと理解しています。
<重石の役割>
・味噌の表面を、出来るだけ酸素に触れさせない。
→ 余計なカビや酵母が、表面にはびこるのを防ぐ!
・溜まり醤油を、味噌の表面に押し上げる。
→ 溜まり醤油が表面に上がる事で、さらに味噌の表面が酸素に触れない。
・発酵で生まれたガスで、味噌の中に空間ができるが、それを押し下げてくれる。
→ 味噌の中でガスが溜まると、隙間ができて、そこに余計なカビと酵母が生えやすい。重石はそれを上から押し下げて、ガスを上に出してくれる。
クドクド説明せず、「重石を乗せてください」とお伝えしたいのですが、そうすると表面の一部にしか乗せない方も出て来ます。それで味噌が出来ない訳ではありません。表面に何か生えても、問題では無いのですが、それを避けたい方の為に書いているので、クドクド説明します。
<重石の乗せ方>
1、伝統的な「落とし蓋と重い石」では無く、
塩をビニールに入れ重石を作ります。
2、味噌の上に、ラップを密着させて、その上に塩袋を乗せます。
3、満遍なく塩袋が乗っているか、よく確認しましょう。
*100%、表面に何も生えない訳ではありません。あくまでも、効果的な予防策です。私のワークショップで紹介してる方法ですが、この方法にしてから、表面に何も生えなくなったという方もいらっしゃいます。
また、酒粕を水で硬めのペースト状にして、味噌の表面に乗せると、一切何も生えません。その方法は、いつかご紹介します。
② 溜まり醤油を味噌の表面に上げる。
味噌の表面が、溜まり醤油で埋まっていれば、余計なカビや酵母が生えて来ません。多少、重石が乗っていない部分があっても、溜まり醤油がカバーしてくれます。
溜まり醤油が溢れない環境づくりも必要になりますが、深い容器を使えば大丈夫です。
以上、この2つが出来れば、味噌の表面にギャ!!とする事は防げます。
どうぞお試しください。
こちらのページで、「味噌に生えた物を、取り除く方法」を映像で紹介してます。再発を抑えながら、常温で発酵を続ける方法を知りたい方は、どうぞご覧ください。