2020, May, 15
みやもと糀店での、10日間。
朝表に出ると、辺りはお米を蒸す良い匂い。蒸し器のある部屋から、真っ白な蒸気が、外に溢れ出ている。作業部屋の中も、蒸しけむりの中。
私が居るのは、2020年2月。
愛知県西幡豆(にしはず)にある、みやもと糀店。
住み込みのお手伝いで、10日間勉強させて頂く事に。
みやもと糀店
みやもと糀店さんは愛知県の海沿いのエリアにある、若くて小さな麹屋さん(2020年5月の時点では)。基本的に宮本さんで1人で、みやもと糀店を動かして製造・発送をしている。販売は基本的に、オンライン。
季節によって、販売している麹は様々。
冬場は、米麹、小麦麹、豆麹、醤油仕込み用麹。酵素たっぷり、優しい甘さの米麹は年間を通して販売しているとの事。4~11月頃は、黒麹(米)も販売している。この黒麹は、女子達に大人気で、甘さと酸味が絶妙な麹。
(詳しくは、お問い合わせを。)
自然農と、味噌・麹造り。
宮本さんは、20代の時から自然農を実践し始めて、その流れの中で味噌や麹造りをする様になったのだとか。大豆やお米も育てている。自然の事をもっと知りたくて、麹を作り始めたと、宮本さんは話していた。自然の循環を身近に感じながら、麹という自然にも、毎年寄り添う暮らしをしている。
麹や農業以外にも、仲間とラジオ番組を作ったり、記事を執筆したり、取材を受けたり、多方面で活躍してる、面白いお兄ちゃん。滞在中は私の他に2~3人お手伝いが居て、常に笑いが絶えず、本当に楽しかった。
冬のみやもと糀店
私がここに居たのは、2020年2月12〜21日。丁度、味噌造りのワークショップや麹
造りで忙しい時期。(本当は、私が来る前が一番忙しかったとか。)毎年1~4月ぐらいの間、色んな所からお手伝いさんがやって来る。
朝の作業は、麹用の材料や麹蓋(木製の入れ物)を蒸して、種付け。他にその日によって、前日に種付けした麹の手入れ、完成した麹の手入れ等、麹のサイクルに合わせて臨機応変に対応していく。ちょっとした条件の違いで、麹の温度がゆっくり上がったり、急速に上がったり。同時進行で、色んな麹を育てて行く。麹という自然、生き物に寄り添う仕事が、麹屋さんなんだと実感する。
毎日色んな種類の麹を作ったり、作らない日もあったり、そこはお客さんの注文にも寄るので、慣れないと混乱してくる。
午後の作業は、やっぱりその日によって違う。発送用の商品を計量したり、麹の手入れがあったり、完成した麹を乾燥させたり。味噌造りがある日もある。1日の終わりには、明日蒸す材料を洗って浸水させる。大量の大豆はなかなか洗い甲斐があった。翌日の味噌造りの事を思いながら無心で洗う。これがなかなか楽しい。
みやもと糀店の
味噌仕込み会
冬のみやもと糀店では、味噌仕込みの会を毎週開催している。1人8kgか12kgなので、東京の味噌造りとはスケールが違う。一方、私の味噌ワークショップは、1人1-2kg。そうじゃないと、みんな持って帰れない。本当は多く仕込んだ方が、より美味しく出来るのだけど。まぁご希望があれば。
「ここのお味噌にしてから、辞められなくなって!」
リピーター率7割の仕込み会。リピーターさんにお話を伺うと、嬉しそうにそう教えてくれる。ペチペチと味噌団子を作る音が、平和に響く縁側。この地域では、味噌造りがどんどん栄えていきそう。そんな光景が目に浮かんできた。
あっと言う間の、10日間を終えて。
本を読んだり、Youtubeや発酵教室で麹造りを学ぶ事は、いまの時代簡単に出来る。手作りは楽しいし、学びも多い。でも、そう簡単には、プロの感覚や知識は私達には身につかない。
宮本さんは、人の手が関わる、自然なサイクルの中で麹造りをしている。でも、「手作り」「自然」という言葉のイメージに甘んじず、試行錯誤でより良い麹造りを目指してる。出来上がった麹の酵素量や、他の菌による汚染の有無等、色んな事に意識を働かせてラボで検査してもらう事もある。人間の目に見えない世界が相手だから、とても大事な事。
こういう心がけがあるからこそ、毎年作るお味噌が美味しくなるし、ファンも増えて行く。
「自然をもっと知りたくて。」
菌と一緒に成長する、みやもと麹店。
一歩踏み込んで、麹造りを仕事とする方の日常に関われて本当に感謝。
宮本さん、機会を有難うございました。
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宮本農園・みやもと糀店
〒444-0703
愛知県西尾市西幡豆町市場25-1
[電話/FAX] 0563-62-6023